一方これまでは、1996年5月の日弁連総会名古屋宣言の公約として、2001年までに弁護士過疎地にセンターをつくり市民から弁護士へのアクセス確保を実現することを運動の主眼においてきました。このたび過疎対策全般が守備範囲になったことにより、センター事業を中心に据えながらも、より木目細かく地域の個別的特性を把握してひろく地域司法のあり方を調査研究していきたいと思います。同時に、従来の懸案であったヒト(担当弁護士)とカネ(設置運営資金)の障壁のうち後者については、ひまわり基金によりほぼ完全に手当てされましたので、これからは全国会員間の情報交流による地域支援活動のあり方を検討していきます。
次に、当委員会活動の到達点と課題を説明します。
まず第一にセンターに関する具体的事業を見ますと、未設置の地域に新たなセンターを開設することが継続の課題です。4月の時点で、全国253の地裁本庁・支部のうち152の地域に185(年度内設置計画を含む)のセンターが設置され、この内71箇所のゼロワン支部については25支部が残された課題です。2001年5月の定期総会において名古屋宣言の完全実施をご報告できますよう、各単位会およびブロック(弁連)のご努力を期待するとともに、当委員会からも地域に赴いて協議・調整その他の支援を継続していきます。1年前の本誌記事では総会宣言実現は悲観的だと書きましたが、ひまわり基金など過疎対策事業への支援態勢が急進展し、弁護士3名以下の地域のセンターに対して年間100万円までの運営費を援助することとなり、これに伴なう成果を日々実感できる喜びとともに、所期の目標が射程距離に入ったと意を強くしています。
さらに状況を分析して具体的地域について検討しますと、これから措置を必要とする地域は、九州9、北海道5、近畿・東北各3、四国2、関東・中部・中国地方各1となっています。とくに九州と北海道については、離島、広大な地域、季節要因などにより、困難な交通事情にあります。しかしこれは需要者側においても同じ負担であり、市民の視点で司法のあり方と改革を考えるとき、私たちのさらなる努力と知恵の出し方が試されていると言えます。
また、センターの形態については、各単位会において地域の特性に応じて独自のあり方が模索されて実行されていますので、日弁連としてはこのような柔軟な対応を支援していくよう各地の情報交流を促進します。そのなかで4月から発足した「対馬弁護士センター」(長崎地方裁判所厳原支部管内・九州弁護士会連合会主催)では、福岡と長崎から順次派遣される弁護士が月火水の3日間滞在し、相談と受任それに法廷活動および刑事当番弁護士を担当し、公設事務所に近い機能を実践しています。この役割を担う9つの法律事務所には大きなご負担をおかけしていますが、毎週の活動状況を現地から発信していただくなど、ひまわり基金を介して全国の会員が地域を支援していることが実感されます。
次に弁護士常駐の公設事務所は、弁護士が相談から受任を通じて市民の最終需要に応えるため、日弁連と単位会および弁護士が協力して法律事務所を設置し、通常の事務所と同様の活動を実現するものです。そこでは法律扶助、刑事当番弁護その他の公益的業務を行なうほか、一般の弁護士活動と同様の仕事をします。当該地域の単位弁護士会の意向を受け、2年ほどの任期を定めて赴任するに適切な弁護士を選任し、協定を締結し、「ひまわり基金法律事務所」の名称にて事務所の物的設備をつくります。過疎地での事務所経営は財政的困難を伴ないますので、開設費400万円、運営費年額1000万円までの財政支援を行ないます。すでにパイロット事業として、島根県浜田市(石見)のほか、稚内市についても旭川弁護士会が設置を決定し、岩手県や沖縄県その他いくつかの地域において検討されています。
さらにひまわり基金では、過疎地に弁護士が定着するように財政支援を講じることとし、開設費400万円および運営費年額400万円までの貸付け(原則として5年経過後に返済)をすることとされています。この4月には早速2箇所のゼロ支部にかかる援助申請が出され、これに応じることとしましたが、長らく弁護士が不在だった地域の弁護士への期待と歓迎を目の当たりにして、支援事業の意義を実感しています。
その他の委員会活動として、弁護士不在地域の実情をよく知るため、各回数十名の参加のもと平成11年度は三順目となったブロック協議会を開催し、実務的情報を交流してセンター設置の成果を得ています。昨年度は順に、中国地方(鳥取市、4月)、北海道(函館市、6月)、東北(盛岡市、8月)、関東七会(長野県松本市、8月)、九州(大分県杵築市、9月)、近畿(京都市、10月)、関東首都圏六会(東京、11月)、中部(三重県四日市市、12月)、四国(徳島市、2月)、そして全国協議会(2月)を行ないました。2000年度においては、これを続けるほか、過疎地を抱える単位弁護士会とより密接な交流をするための懇談会を計画しています。
次に、本年10月から新しい法律による法律扶助事業が行なわれることになりますが、法律に基づくことの性格上、全国均質の法務サービスを提供することが要件になります。いまだ相当多数の地域に弁護士が不在で、またセンターの設置も完全ではありません。ひまわり基金が設置されたことと相まって、法律扶助について全国各地域での受け皿の役割を果たせるよう、センター設置のほかその機能の充実をはかっていくことが今年の大きな目標です。
最後に、5月の日弁連定期総会(鹿児島市)において、司法過疎の解消をめざして、「司法サービスの全国地域への展開に関する決議」がなされます。その趣旨は、弁護士過疎を含む地域の問題状況を「司法過疎」ととらえ、従来からの弁護士会独自の努力のみならず国や地方公共団体との協力を含め、市民のためにふさわしい施策を実現するための運動をあらゆる地域で展開することにあります。私たちの委員会は、離島や半島などセンター設置を困難にする多くの要素を持つ鹿児島県においてこの決議がなされた意義を玩味しながら、多くの単位会と協調してこの総会決議に即した運動の中核を担うことにつき、決意と感慨を新たにしています。
2000年5月8日記